イタリア庭巡りの旅・・・15(最終回)ヴィラデステ

5月26日・・・6日目最後の訪問地エステ荘の庭園

ローマの東およそ30kmの丘陵にあるティボリのエステ家の別荘は、4,5ヘクタールもの敷地です。
庭園には噴水が大小500ほどあり、傾斜地を利用したダイナミックで美しい噴水群はイタリア一。歴史的にも貴重なものです。
2001年ユネスコ世界遺産に登録されました。


私は18年目の再訪でしたが、前回より何もかも強く感動致しました。
ガイドさんの説明によりますと、10年前に噴水や木々や花々などの植物に手が加えられて、きれいになったとのこと。
まずはともあれ、この入口から入り、かつて修道院だった回廊そして大広間などを通り、この館の歴史を感じ取りながら、その庭園へと進みます。











室内から戸外に出た時のテラスからの景色です。
左右に広がる開放的な絶景に、誰もが驚きと感動を感じることでしょう。
この見晴らしの良い贅沢な風景を借景に眺める庭園、
斜面を下りながらそれぞれの庭を楽しむ、これぞ後期ルネッサンス期の代表的イタリア庭園です。

16世紀の半ばからベネディクト会の修道院だった建物を住居とした、エステ家。
大規模な庭園の設計はビーロ・リゴーリオ。後にレイアウトや持ち主の変化もありました。
いっとき荒れ放題、やがて修復運動がありその後も1944年の爆撃での破損そして修復など、様々な歴史を持ちます。
今こうして眺めることが出来ることを感謝したのでした。



まず最初は階段を下りて右の、「ヴィーナスの噴水」へ。
ヴィーナスが上から見下ろす堂々とした姿。
後ろは回廊になっています。
眼前に迫る美しい噴水。豊穣という様子の水の豊かさ。
水音の心地よさにあらためて気づきます。
この庭園は動力を使わない噴水です。
斜面のために、計算しつくされた設計がされています。
「ヴィーナスの噴水」は、噴水の水の取り入れ口になっているとのこと。





「百の泉」
100メートルほどの直線の道。
そこにはすべて違う動物の顔が続いています。


その口から絶え間なく噴き出す水。その後ろでは小さな滝や繊細な噴水が噴き出ています。



「ヴェヌスの噴水」は、繊細な模様のレリーフ


「小舟の噴水」ではおりしも太陽が顔を出して飛沫がきらきらと輝きます。
上の右側には、ローマ建国の父といわれる双子の兄弟が雌狼に育てられたという彫像が。



当時、賓客のために急遽作られたという「ドラゴンの噴水」
はるかかなたの反対方向の入口から賓客があらわれた時、直線の先のヴィスタにこの力強い見事な噴水を見て、
どんなにか、驚かれたことでしょう。
高い位置に水を溜めてその水を流しパイプを通して噴水として吹き上げる仕掛けは画期的な事であり、10m以上の高さは、
大変話題になったのでした。



ヴィスタの先の一番奥が「オルガンの噴水」、その手前が「ネプチューンの噴水」、
その手前には、プールのような池が三つあり、縁にはレモンなどの柑橘類の木の鉢植えが置かれています。


ネプチューンの噴水」の迫力には言葉を失います。


「オルガンの噴水」から池を眺める。
ネプチューンの噴水がここまで噴き上げて、心に迫ります。



「オルガンの噴水」は、当時水仕掛けのオルガンだったのですが、今は3:30よりパイプオルガンでリストの曲が奏でられるとのこと。
直前に3:20開始とわかり、ガイドさんに続いてスピードで歩き、無事時間までにたどり着きました。

フランツ・リストピアノ曲集「巡礼の年第3年」には、実際に訪れて作曲したという、エステ荘をモチーフの3曲があり、「エステ荘の噴水」のピアノ曲は、その水音の表現の繊細さに惹きこまれます。
旅立つ前そして現地で噴水の水音を聴きながら、そして帰国後もそのピアノ曲を聴けば、格別な庭園鑑賞になるに違いありません。


帰り道、始めの噴水を通り過ぎました。
辺りには誰もいません。
大慌てでNさんにシャッターを押していただきました。
聞こえるのは噴水の水音ばかり。その時代に遡った錯覚がおきるほどです。


エステ荘の家紋・冠のワシと百合の花。
エステ荘は、イタリアの庭巡りの終わりにふさわしい、素晴らしい庭園でした。



◎15回にわたる、「イタリア庭園巡りの旅」はこれで終わります。
「イタリアの庭」というと、まだまだ日本では知られていない場所ばかりです。
こうして今回イタリアの庭巡りをして、歴史をひもときながらこの国の庭の歴史の深さを感じたのでした。
たとえば、イギリスの庭園のボーダーのような花いっぱいの場所が無くても、庭を見ていて心が満たされることに、ふと気づいたこともありました。

少人数での旅のために、和気藹々と、とても素晴らしい旅となりました。
参加なさった皆様お世話様でした。
又、ご一緒できましたら幸いです。
酷暑へと向かいます。どうぞご自愛くださいね。
 


担当して下さったクラブツーリズムの舩山さん、いろいろとお世話様でした。
今度は是非ご一緒したいです。