タンポポ


 庭でタンポポを一本だけ栽培しています。ロゼット状の姿、蕾、花、花後のホワホワすべて好きです。幼い頃早春に兄たちとタンポポナズナを採りに行き、母がお浸しにしてくれた家族の想い出があるからかもしれません。ナイフを使って上手く収穫できたことを父に誉められ、晩酌の一皿からすすめられて食べた苦いタンポポ。皆で大笑いしたセピア色の想い出です。
 タンポポには全草薬効があり、特に根が知られています。そのために根をスライスして焙じて粉状にしたものは、タンポポ・コーヒーとして好まれます。葉をサラダにしたりお浸しに利用したりしますが、この場合は若くて苦味の少ないものを選びましょう。
 レイ・ブラッドベリの『たんぽぽのお酒』は、大好きな本です。感受性のするどく傷つきやすい少年の「特別な一夏」が、家族や周囲の人とともに描かれています。地下室でおじいちゃんが作るタンポポのお酒は100本以上にもなります。この本に登場する料理名人のおばあちゃんはとても素敵です。それに登場人物がユニークで「夢を見るための緑の黄昏印」など、瓶に詰めた空気を売る人も登場します。