『アンの青春』の ミス・ラベンダーのポプリ。


 中学生の頃夢中になって読んだ『赤毛のアン』(L.M. モンゴメリ著、村岡花子訳)は、想像することの楽しさや『同類』の存在を教えてくれました。
 2冊目の『アンの青春』には、ミス・ラベンダーと呼ばれる女性が登場します。
 私にとってこれがラヴェンダーとの最初の出会いでした。
 ミス・ラベンダーは“山彦荘”という森の中の石の館に住んでいる45歳の独身女性です。10月のある日アンは“腹心の友”ダイアナと一緒に道に迷い、通りかかったこの家で、ミス・ラベンダーにお茶に誘われます。そこで素敵なひとときをすごすのです
 アンはその後ミス・ラベンダーの家をしばしば訪れ、暖かな友情が結ばれました。
 12月の雪の日、賑やかで心はずむ夜を過ごし炉の前で寛いでいる時、炉棚においた薔薇の壷からはほのかな香りが漂ってきます。「ばらの壷」と訳されているこの部分は原書ではrose-jar(ローズ・ジャー)になっていてそれはポプリのこと。ローズ・ジャーはミス・ラベンダーが蓋をとってあるので馥郁と香っています。
 私はこのポプリは彼女自身が庭に咲くラヴェンダーや薔薇やあずまやから摘んだハニーサックルなどを材料として手作りしたポプリにちがいないと思いました。
 ミス・ラベンダーの家の庭にはラベンダーのボーダーやハニーサックルのあずまやがあり、バラが咲いているのです。
 そこでポプリはこれらを使い作りました。どれも我が家の庭にも咲いていたのです。
 ポプリからは甘さも爽やかさも含む深い香りがして、目を閉じて香りを聞くと、 ミス・ラベンダーやアンがそこにいるような気持ちがしました。