ボストン夫人が遺した布も使ったキルト №4


雑誌『カントリークラフト』の取材で再度訪問
 翌年、雑誌『カントリークラフト』のブリティッシュ手づくり紀行特集で、イングランドからウェールズスコットランドまで、手作りの取材をすることになりました。もちろんグリーンノウの館も。
 10か月ぶりにうかがう時、私はスーツケースの中に2メートル正方に縫いあがったばかりのキルト・トップを入れていました。
 日曜日の朝、約束したとはいえ、通されたダイニングでは一家が食事だった様子。
 そのテーブルに、どうぞどうぞと温かく迎えて下さり、私はすっかりくつろいで、クッキーとおいしいミルク・ティーをご馳走になりました。
 そして、
「昨年、日本に帰ってから、これを作りました。私はこの作品の中心に、ボストン夫人が遺された布5㎝正方でも使わせていただきたくて、こうして持ってまいりました」
「オー!こんなものを持ってきた人は、いまだかつていなかった。このカレイドスコープのキルトは、ルーシーのお気に入りで、自分自身のベッドにいつも掛けていました」
「あの時はしまっておいて、お見せしなかったのよ」
それは私も初めて知ったことでした。
驚きと嬉しさが体中を巡る思いでした。
 この時おおいに感動してくださったのは、亡きボストン夫人の息子のピーターさんと妻のダイアナさん。
 ダイアナさんは、
「残念なことに、残った布は全部姪に上げてしまいました。でももしかしたら、納戸の箱の中に僅かでも、残っているかもしれないわ。後で探してあげましょうね」
 当日は館を見学する団体がいくつもあり、ダイアナさんは大変多忙でした。
 庭には五月の花々が咲き乱れていました。
 ピーターさんがお出かけの時間になり、庭でピーター&ダイアナ夫妻とお嬢さんと彼の記念撮影。素敵な家族の肖像です。
 ピーターさんとはこれが最初で最後の出会いとなりました。(つづく)
◎ ポストカードのみを見ただけでしたので、私のカレイドスコープは、ボストン夫人のものと違い周囲がピースそのもののフリンジのあるものになりました。かえってよかったと思っています。
 ニュアンスが変わらぬよう、カントリークラフトの私の文章を一部そのまま記載してあります。