「Girls be ambitious」の香り

沈丁花の白花も赤花も見頃を迎えました。香りを確かめようと、強風の中、小枝を摘んで台所の出窓に飾りました。
姉から、「一番好きな香りなの。どんな花よりもストレートにすっきりして、脳の奥まで切り込むようにくる香り。台所の出窓に飾り、いつも香りを確かめているのよ」と聞いてから、私もそうしています。

父が飯田の三穂に校長として転任が決まった時、高校受験を控えていた姉は祖母、兄とともに松本に残り、私は弟と母と父の任地の三穂で三年間暮らしました。私が小学校4年から6年生の時のことでした。
一昨年姉との電話のやり取りの中で、沈丁花の花の香りのことが話題になりました。
その時私は初めて、姉がいかに沈丁花の花の香りを特別のものに感じているのか、当時いかに心細い三年間をおくったのかを知ることが出来ました。
姉は、身体も弱く受験のプレッシャーもあって、庭の沈丁花の香りが漂うと、『厳しい冬を越すことが出来た。生きられる』と思ったそうで、
「Girls be ambitious」と、自分を鼓舞する香りだったとのこと。
当時私は三穂で父母の元、弟とヌクヌクと楽しく幸せに暮らしていたのでした。
姉からその話を聞いて以来、春になると咲く、その切り込むようにくる香りを日々確かめようと、こうして台所の出窓に飾り、又今夜も電話で姉と語リ合うのです。
沈丁花のこのお話は拙著『私の庭から』(千早書房)でも述べました。興味ある方はごらんください。