ボストン夫人が遺した布も使ったキルト №5

ボストン夫人は巻きかがりでキルト制作
ダイアナさんの手が空き、室内を案内して下さり、ボストン夫人の作品を収納した客部屋に移動しました。部屋の片隅には庭の薔薇の花びらがたくさん置いてあり、「あなたとお姉様の本を見て、ポプリを作っているのよ」とのこと。前回差し上げた本をごらんなったようです。なんだか嬉しくて胸がいっぱいになりました。この本を撮影したカメラマンはこの日撮影の奥宮誠次さんでした。
 白い手袋をはめて、キルトを一つ一つを拝見しました。再度見たもの、初めてのものもありました。
 ボストン夫人のキルトのすべては、芯地になるものがいっさい入っていません。
 ピースとピースをつなげる時には、巻きかがりでつなぎます。1インチに20のステッチを入れ、糸は6回ごとに引き、それは大変なスピードだったそうです。
 縫いあがった後は型紙をはずし、裏地を縫い付け、またその型紙を他に使用。
 ボストン夫人の仕事ぶりは、こうした取材で初めてわかるのだなと、貴重なお話がうかがえたことに、心躍りしました。 帰国してしばらくして、飛び上がらんばかりに、嬉しいことがありました。
 ダイアナさんが、ボストン夫人が遺された布を5種類送ってくださったのです。
 真ん中の小鳥の布の横のところのピースを一枚はずし、ボストン夫人の布で作ったピースをはめ込みました。裏地は薔薇模様にしました。それまでは芯地を中に入れたキルト作りでしたが、ボストン夫人と同じようにナシにすることにしました。この時、このキルトをもっと特別なものにしたいと思いました。
 そうだ。グリーンノウの庭に遺されたボストン夫人が愛したオールドローズの花びらをボストン夫人の布のピースのところにだけ挟み込もうと。
 そして翌月に出かけた庭巡りの旅の時に再度グリーンノウの館を訪ねました。庭は薔薇が咲き誇り芳しい香りで満ちていました。ダイアナさんに事情を説明して薔薇の花びらを片手に半分ほどいただきました。
 それを旅の間干してドライにして、帰国してから縫いこみました。
 ですから、真ん中だけすこし膨らんで、さわるとカサカサ音がします。
 感謝でいっぱい、想い出の宝物のキルトです。
  昨年は9月に姉と訪ねました。薔薇の実が赤く熟し秋バラが咲いていて、それは至福の時でした。ダイアナさんもお元気で、この館の保全に心を尽くしていらっしゃいました。カントリークラフトの取材の時にお会いしたお譲さんはその時の彼と結婚し、今はかわいい二人の子供のママになっていました。
 長い時間をかけて時が進むと、こうしたなんともいえない心のつながりができて、幸せに思います。
ずっと作り続けてあともう少しのキルト。あわてることなく作り続けるのもいいものだなあと、この頃思います。(おわり)
 
◎真ん中の水色の三角布四枚の内側の布の部分がそのピース。その右側にピンクのリボンでまとめてあるのが、いただいた布。