ボストン夫人が遺した布も使ったキルト №3


心に迫るグリーンノウの館 
 爽やかな緑の風が通り過ぎる中、グリーンノウの館が見えてきました。小さな門扉を開けて、ユーツリーのトピアリーの小道を進みます。
 ボストン夫人の息子ピーターさんの妻ダイアナさんが迎えてくださいました。
ダイアナさんは、1130年代に建てられた部分のある、英国で住まいとして使用されている、最も古い館の一つというこの館の説明をデザイン図で説明。その後、グリーンノウ物語のモデルとなった場所一つ一つを説明して下さり、室内に入りました。
 12世紀の石壁の部屋の中のカーテンとして使用されているアンティーク・キルトが目に飛び込んできました。これが姉のエッセイにも登場したあのキルトです。
 小さな八角形の布の真ん中に1801年と日付が入っていて、ボストン夫人がこまめに修復されています。とても華やかな色合いで、このキルトがあることで、石壁の室内は花園のような雰囲気になるのでした。
 二階に移動してボストン夫人が遺したキルトの説明が始まりました。25〜26名の旅行参加者がまわりを取り囲みます。
 一枚一枚の説明が続き、その色合いの素晴らしさ、デザインのの素晴らしさに感嘆しました。
 その後一階の売り場に移動しました。
 キルトのポストカードやボストン夫人の本などがならんでいました。
 ポストカードの中に私の心をつかんで離さないものがありました。
 それは「カレイドスコープ」のパターンですがボストン夫人が考えたオリジナルの工夫のあるものでした。先ほどその実物を見なかったことは不思議でしたが、このパターンを自分流に少し変化させて、自分の持っている布すべてのものを駆使し、最高に美しいものを作りたいと強く思いました。私は一から考えて作るオリジナルのものが好きなので、こんな感情ははじめてのことでした。
 帰国してすぐに取り掛かりました。
 当時私はハーブに関する仕事で忙しく、文献を読んだり調べたりの時間が多くなり、資料調べをする、染色等々ハーブに関するさまざまなことをするなど、時間は瞬く間になくなる毎日でした。
 その残りの時間を紡ぐように、針を持ち、一枚一枚のパターンを縫い進めました。縫いあがるたびに窓辺にとめつけて、待ち針で付け加える喜びは、疲れを忘れさせる、昂揚感のあるものでした。(つづく)

◎購入したポストカード(Photograph; Julia Hedgecoe、Marianne Majerus)。ボストン夫人のキルトはむろん、館の様子や部屋の様子も素敵です。ピーターさんの本に使われたイラストも素晴らしいです。
 真ん中左より3枚目が私の心をくぎ付けにした、ボストン夫人の「カレイドスコープ」のポストカードでその左隣2枚が私の最も好きな作品でした。右より2番目がアンティーク・キルトです。